自分は鉄分の多い人間だ。
つまり鉄道が好きなのだ。
かといって先日、西川口駅で起きた暴力事件のような撮り鉄でもない。
つまりあえてカテゴリー分けをするとしたら鉄道旅が好きな乗り鉄になるだろう。
コロナ禍の今ではめっきり鉄道旅をする事がなくなってしまった。
そんな自分がお薦めするのが「端」の駅だ。
日本に東西南北の端の駅(那覇モノレールが出来てからいろいろと定義が変わってきている)が存在するが、自分のお薦めは最東端の東根室駅だ。
というかこの東根室駅に行きたいというよりもそこに至る旅が好きといった方が正解だろう。
根室本線は函館本線の滝川駅から道東の根室に至る延長443.8kmの大いなる幹線だ。
東海道本線(東京駅-神戸駅)が589.5kmだ。
北海道の大きさが実感できる数字だと思う。
ただこの路線全線を通して走る車両はない。
特急電車の「おおぞら」でさえ札幌から石勝線経由で釧路駅止まりになっている。
つまり根室本線の終点である根室駅に向かう車両は釧路駅始発しかないのだ。
それも根室駅まで向かう車両は快速2本を含む一日僅か6本のみ。
最果ての地を予感させる鉄道ファンに最高のローカル線だ。
この釧路駅-根室駅間の営業指数(100円の営業収入を得るために必要な営業費用を表わす指数)が2016年度で¥542。
東京の山手線が\57ぐらいだからその厳しさが理解できる。
昨今のJR北海道の営業不振もあり、この釧路駅-根室駅間は「安全な鉄道サービス」を維持するための費用が確保できない線区とされている。
つまるところJR北海道は廃止に向かいたい区間なのだ。
そうなると鉄道好きな自分は俄然と応援したくなる。
釧路駅を出発すると根室本線は単調な原野を走って行く。
ところが厚岸駅を過ぎると眠気を覚ます風景が広がる。
湖面の上を走っているかのようだ。
両側の窓に広がる湿地帯の景色はまさに絶景だ。
ここは平成5年にラムサール条約の登録地にもなった別寒辺牛(べかんべうし)湿原だ。
平行する国道44号線があるが、あえてこの根室本線で旅する事をお奨めしたい。
道東の風景はまるでロシアを思わせる。
鉄道紀行で有名な宮脇俊三氏も著書でそう表現していたが、本当にそう思わせてくれるのが根室本線の旅なのだ。
丘陵地帯を車両は進む。
昆布盛駅を過ぎて根室半島に入ると根室本線は終点根室駅の手前で大きく左にカーブする。
そこにあるのが日本最東端の無人駅である東根室駅だ。
多くの方が根室駅が最東端を思われていただろう。
「北緯43度19分25.2秒、東経145度35分50秒」まぎれもなくこの駅が日本の最東端である。
車両はそのまま終点、根室駅に流れ込む。
街にはロシア語の表記された看板もあり、国境を感じさせる街だ。
ピーク時45,000人いた人口も今や24,500人で衰退の一途を辿っている。
乗降客がいないから鉄道の本数が減る。
鉄道の本数が減るから人口が減る。
人口が減るから廃線にする。
北海道のみならず日本の地方が抱える負のスパイラルのなかにある。
北海道や離島など国防上の理由からも国が税金を使ってある程度交通インフラをバックアップする必要があると思う。
かけがえのない国土は国民全体で守るべきだ。