明治維新以後、日本の産業を支えてきたのは繊維産業といっても過言ではないと思う。
そのほとんどが人件費の安い中国や東南アジアに生産の拠点を移してしまったが、ここに来て「日本品質」を見直そうという消費者の動きがある。
そのひとつが「今治タオル」だ。
下着と同じで肌に触れる部分が多いからの評価だと思う。
今治のタオル作りは1894年(明治27年)にはスタートしている。
現在では国内生産量の半分を担っている。
ちなみに今治にはこれまた近隣諸国から造船の受注を奪い返した造船所が14ヶ所あり、国内シェアの17%を確保している。
なかでも今治造船は有名で世界シェアでも上位につけている。
今治は近代日本をささえた瀬戸内有数の製造業の街なのだ。
その特徴は染色技術と洗わなくても使い始めるから実感できる抜群の吸水性だ。
中国や東南アジアと価格競争しても勝てるわけはない。
そもそも加工賃が安いところに仕事が流れるのは商売においても自然の摂理だ。
加工の棲み分けをして日本では高品質なものを作るのがベスト選択というもの。
なにもこれはタオルに限った話ではない。
愛媛県の対岸の岡山県倉敷市はいわずとしれたジーンズの街だ。
今、この街では「ジャパンブルー」としてメイドインジャパンのデニム生地の復権に動いている。
メイドインジャパンは品質の証だ。両社のみならず日本の繊維産業を支える皆さんにエールを送りたい。
前回の東京オリンピックの際、大松監督率いる東洋の魔女を構成していたのは、日紡貝塚の選手たちだった。
この日紡貝塚はのちのユニチカである。
当時のバレーボール実業団には旭化成、帝人、東レなどの繊維産業が多かった。
スポーツはその時代をけん引する産業がスポンサーになるという。
特にプロ野球は顕著で一時期、近鉄、阪急、南海、阪神、西武など鉄道会社が花盛りの頃があり、現代においては、DeNA、楽天などIT企業が出始めている。
近いうちにまた繊維産業がプロスポーツのスポンサーになる時代が来るかもしれない。
東レなどは飛行機にも使われる炭素繊維(鉄との比較で比重で1/4、比強度が10倍、比弾性率が7倍)で世界的に先行している。
表だって出てこないが素材産業は日本のお家芸だ。
中韓のように組み立て工場になっては意味がないからだ。
素材が良くて今治タオルやジャパンブルーのような繊維を織る技術がある。日本もまだまだ見捨てたものじゃない。