自分が中学生ぐらいだったろうか?
「口裂け女」という噂が日本中に飛び交っていた。
「口裂け女」は「ツチノコ」と並ぶ日本の都市伝説のはしりだったのではないだろうか?
大きなマスクをしている女性が通学途中の子供達に「私、綺麗?」と声をかけてくる。
聞かれた子供達はわけもわからず「綺麗」と答えるとおもむろにマスクを外してその口元を見せる。
なんとその女性の口元は耳のあたりまで裂けているのだ。
「綺麗じゃない」なんて言おうものなら包丁を持って追いかけてくる。
という噂が当時、巷ではまことしやかに囁かれ話題になっていた。
ところがこの噂話がマスコミに取り上げられると情報がどんどんローカルごとに着色され始めていく。
特に容姿に関しては「身長が2mを超えている」とか「白い服を着ている」、「サングラスをかけている」などである。
また走ると世界最高のスピードが出るというのだ。
それも100mを6秒台。
いったい誰が計測したのかと突っ込みたくなる話だ。
噂が伝わる段階で一部の人の主観が尾ひれはひれを付けていく。
ただ噂話といってもさすがに自治体や警察もほっておくわけにはいかない。
北海道や埼玉県では実際の対策として「集団下校」がおこなわれていたようだ。
日本ではこの手の話は子供への戒め的な内容のものも少なくない。
例えば子供が川で遊ぶ際の戒めとして発展したのが「河童伝説」だ。
また夕方になったら早めの帰宅を促す「神隠し伝説」などもある。
しかしこの「口裂け女」にはそのような子供への戒め的な意味合いは全くないようだ。
この噂のルーツに関しては諸説あるようだが概ね中部地方が怪しいらしい。
たぶん口裂け女は岐阜県が発祥ではないだろうか?
口コミで全国に広がることを考慮すると日本のへそである中部地方だと説得力がある。
もしこれが現代の話だったらSNSで瞬時に拡散して3ケ月も経たないうちに騒ぎは収まるだろう。
当時は携帯もスマホも無い。
「友達の友達の話」とか「親戚のおじさんの友だちの話」などの又聞きレベルの話がどんどん誇張されて行ったのだろう。
ある意味、現代よりも非常に良い時代だったのかもしれない。
そういえばこの噂から数年後にはあの「ガチャガチャ」に「口裂け女の口」が並んでいた。
自分は商魂たくましいおもちゃ業界に驚かされた。