9月6日に起きた北海道胆振東部地震の影響で操業を停止していた国内16の完成車工場のうち中京地区の11工場で11日から生産を再開した。
丸5日間生産ラインが止まった事になる。
先の東日本大震災の際には国内外の自動車メーカーのラインが止まったのは記憶に新しい。
自動車産業は完全な分業化が進んでおり一つのパーツでも入荷ができない場合、完成車工場はラインを止めざるえなくなる。
今回は北海道の苫小牧にある変速機を作るトヨタの子会社の影響によるものだ。
ところで一般の製造工場では部品のある程度のストックは当たりまえだがトヨタは「看板方式」のもと在庫を可能な限り持たない仕組みを構築している。
この「看板方式」とは「ジャスト・イン・タイム」の発想から生まれている。
「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」調達するという意味だ。
もちろん会計上、在庫を持たない事は理想であり、「ムダ、ムラ、ムリ」が無くなり生産効率もあがる。
ところが一旦今回のような天災や人災が起こるとトヨタの製造ラインはそのほとんで一気に止まってしまう。
「看板方式」の基本概念とは一工程だけが前に突出して意味がないという発想だ。
前後の工程が一定のスピードを保つことにより工場全体の生産性があがるというもの。
だから仮にひとつの工場がその工場で使うパーツを適正在庫以上持っていたとしても全体の生産性が上がらないわけだ。
これは同工場内だけの話ではないと思う。
例えば北海道の下請け工場の電気インフラなどが完全復旧しても、そのパーツを移動させる物流インフラが復旧しなければどうにもならない。
ただ単にその下請け工場に出荷できないパーツが山積みになるだけだ。
確かにこの「看板方式」の概念は理にかなっている。
当初、トヨタの生産ラインが先の東日本大震災や今回の北海道胆振東部地震で止まった時には、トヨタの「看板方式」の弱点だと思っていた。
がやはりこれは生産工場においては必要不可欠のシステムだと思った。
もちろん自動車生産に限ったことではない。
現在多くの分野でこの「看板方式」を取り入れている。
非常事態の時だからこそ日本企業の真価が問われている。
そして北海道の人達に早く普段の日常に戻れるように祈りたいと思う。