平日の新宿駅発の時刻表を見てみる。
湘南新宿ラインの高崎・宇都宮方面を見ると赤い数字が眩しく見える。
日光行きの特急「日光号」と鬼怒川温泉行きの「きぬがわ号」だ。
また同じ鬼怒川方面行きだが「S」という文字が付加されている特急がある。
東武鉄道が保有する「スペーシアきぬがわ」だ。
JR東日本と東武鉄道が特急電車を相互に直通運転させている。
JR東日本は平日、「日光号」と「きぬがわ号」を各一往復させている。
また東武鉄道は「スペーシアきぬがわ」を二往復させている。
この何気ないダイヤ編成も2006年(平成18年)まで鉄道ファンには信じられない出来事だったのだ。
JR東日本の前身である旧国鉄と東武鉄道は「日光」という一台観光地の集客でしのぎを削っていた。
ただ宇都宮駅からスイッチバックするような構造の国鉄日光線では直線で日光にアクセスする東武日光線と時間的に勝負にならない。
また東武鉄道はその規模からフットワークも軽く東武特急ロマンスカーを投入してこの勝負に決着をつけた。
以後、国鉄側も上野駅から日光駅に直通する車両をなくしていたのだ。
一見、東武鉄道の独壇場に見えた日光路線もモータリゼーションブームの到来でジリ貧になる。
そこで東武鉄道が目をつけたのがJR東日本との相互直通運転だったのだ。
当時、東武鉄道は営団(現在の東京メトロ)と直通運転をしておりそのレバレッジ効果を実感していたのかもしれない。
昨日の敵は今日の味方だったのだ。
そもそもこの相互直通運転のメリットは双方にある。
JR東日本は諦めていた日光方面のルートを回復できたこと。
何といっても新宿駅発だからこの効果は計りしれない。
そして東武鉄道側のメリットはその新宿駅に看板特急「スペーシア」が乗り入れできた事にある。
さてこの直通運転をするために白羽の矢が当たった駅があった。
宇都宮線(東北本線)と東武日光線が交わる「栗橋駅」だ。
16億円と投じて双方に連絡線を設置。
特急電車はこの「栗橋駅」には停まらない。
一般的にいう「運転停車」だ。
ただ双方の電圧の関係で惰性で通過する「デッドセクション(死電区間)」が設けられた。
その関係で鉄道ファンにはたまらない厳かな時間が生じる。
実をいうと自分はこの一番電車が走る日にこの栗橋駅に訪れている。
歴史が変わった日に立ち会えた事は幸せだった。