「地の利」という言葉がある。
地形の関係などから四方八方から路線が集まる駅がある。
路線が集まれば人が集まる。
人が集まれば資金も集まる。
時として鉄道はその土地の価値さえも変えてしまう。
このような四方八方から路線が集まる駅を自分は「扇の要駅」と呼んでいる。
日本全国には近隣から路線が集まり乗降客の多いこの扇の要駅がいくつかある。
首都圏なら新宿駅や東京駅、品川駅に渋谷駅、上野駅に北千住駅、大宮駅に横浜駅、千葉駅に八王子駅などなどだ。
また近畿圏なら京都駅に大阪駅、なんば駅に天王寺駅、三ノ宮駅に姫路駅あたりになるだろう。
その他にも名古屋駅、仙台駅や郡山駅、高崎駅や水戸駅、岡山駅や広島駅などが該当する。
なかでも興味深いのが中国地方だ。
中国地方の扇の要駅である岡山駅と広島駅。
中国地方の中心都市といえば広島市が一般的な概念になるだろう。
1980年に政令指定都市に移行、現在でもおよそ120万の人口を有する大都市だ。
東京や大阪に本社を置く企業も中国地方に支店を開設する際には広島市におくのが一般的だ。
さてその広島市に遅れる事29年、2009年に政令指定都市に移行した岡山市は今も広島市の後塵を拝している様にも見える。
ただ扇の要的な観点が見れば岡山駅は中国地方最大のターミナルと言える。
つまり鉄道における中国地方の中心は広島駅ではなく岡山駅なのだ。
というか路線が集まる観点からだけ見れば岡山駅は日本でもかなり上位にランクされるはずだ。
幹線である山陽新幹線と山陽本線。岡山県北部の津山市に繋がる津山線。
山陽本線の東岡山駅から分岐して播州赤穂に繋がる赤穂線。
南に向かう路線は本州と四国を唯一鉄道路線で結ぶ宇野みなと線(瀬戸大橋線)。
そして岡山駅の西側にある倉敷市から分岐して米子方面に向かう伯備線。
そしてその伯備線の総社駅に向かって吉備線が岡山駅から繋がっている。
まさに扇の要だ。
実は瀬戸大橋線と伯備線の整備が岡山駅の運命を決めたと思っている。
伯備線は山陽新幹線開業に伴い陰陽連絡路線として脚光を浴び全線が電化された非常に恵まれて路線である。
路線が集まる事により都市圏人口も膨れあがる。
意外だが単体の都市人口では広島市に敵わない岡山市も、都市圏人口では広島市を上回っている。
岡山市の都市圏人口はおよそ152万人で、広島の143万人を凌駕している。
岡山市の隣には人口47万人の倉敷市という工業都市があるのも強味だ。
時として鉄道はその土地の価値さえも変えてしまう。