「三方良し」という言葉を聞いた事があるだろうか?
「三方」と言っても大岡越前守の「三方一両損」の事ではない。
三方良しとは「近江商人」の現代にも通じる行動哲学とされているものだ。
そもそも近江商人とはどんな人々なのか?
近江商人は近江国(現在の滋賀県)の商人が総じてそう呼ばれている。
この近江商人は商才に長けており、大坂商人、伊勢商人と合わせて「日本三大商人」と呼ばれている。
この近江商人の系統をひく企業を見ればその凄さが理解してもらえるだろう。
大丸、高島屋(高島屋の名称は滋賀県の旧高島郡からとられている)、西武、伊藤忠商事、丸紅、住友、兼松、東レ、ワコール、ヤンマー、西川産業など有名一流企業が名を連ねている。
これらの企業の現在の成功をみれば自然と三方良しという言葉に興味が湧いてくるだろう。
その近江商人の行動哲学と言われる三方良しとはどのようなものなのか?
この三方よしとは「売り手よし、買い手よし、世間よし」のことだ。
自分だけの利益を考えずに商売相手の利益も考慮してあげる。
そしてその経済活動が地域社会にも利益をもたらす必要があるというものだ。
自分も営業職を長く経験してきた。
多くの営業マンは「商売は安く仕入れて高く売れ」と教わってきているはずだ。
もちろんそれは間違っていない。
しかし近江商人の発想ではないという事だろう。
自分は近江商人の三方良しは利益分配による商売の長期的継続を考えたものだと推測する。
つまり短期的な高利益よりも長期的に継続する低利益のほうが結果として儲かるということではないだろうか?
昔はメーカーだけが儲かる時代、そしてその後、流通だけが儲かる時代があった。
現在も某大手コンビニがオーナーと揉めているのも最終的には利益分配だ。
そろそろこの手のビジネスモデルは終焉に近づいている。
人口が減少している日本で一人勝ちを目指しているような企業は結局、淘汰されていく。
近江商人の三方良しとは商売のテクニックというよりは人間としての生き方を教えているような気がする。
今回の新型コロナウイルス騒動で異業種なのに不足するマスク製造に乗り出した会社が多数あった。
企業が生き残っていけるのも日本という平和で安定した国の土台があるから。
世間よしとは社会奉仕だけではなく販売促進活動の一貫なのかもしれない。