長く停滞していた高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分地選定をめぐり、北海道寿都町が8日、文献調査への応募を表明した。
同じ道内の神恵内村も9日に応募を決定する。
いずれも背景にあるのは、急速に進む過疎化への危機感だ。
人口が減少し産業が衰退する中、最大20億円の交付金への期待もあり苦渋の選択を迫られた。
ただ、反対派住民は反発を強めており、それぞれの地域内に深い亀裂を残した。
◇「村の発展のためなら」
「戦後最大の不況が迫っている。今、手を打たないと遅い」。寿都町の片岡春雄町長は9月、応募をめぐる住民説明会で町の経済状況に危機感をあらわにした。
寿都町の人口は約2900人。
65歳以上の高齢化率は4割に上り、20年後には約1800人にまで減るとみられている。
町の歳入の根幹を成す住民税など税収の大幅な減収は必至。
基幹産業である漁業や水産加工業には新型コロナウイルスが追い打ちをかけ、売り上げが一段と落ち込んだ。
これに対し、文献調査を受け入れるだけで交付される20億円は、寿都町の年度の町税収の10倍近い金額。
産業振興投資など町の活性化に向けた貴重な財源となる。
片岡町長は交付金を「おいしい部分もある」と説明、町の将来のために住民に理解を求めた。
一方、北海道電力泊原発がある泊村に隣接する神恵内村。
応募の流れをつくったのは「原子力と共存共栄の精神を持つ村が調査に協力するのは当然」との地元商工会からの請願だった。
もっとも、村の実情は寿都町より厳しい。
ここ数年は毎年30人規模で人口が減り、現在は住民約820人で「最先端の過疎地でコンビニエンスストアもない」(住民)。
賛成派の住民は「村の発展のためなら最終処分場の受け入れも選択肢だ」と語った。
◇不審火で緊張も
しかし、自分たちの住む町や村が何世代にもわたって継承が必要な「核のごみ」の最終処分地の候補地となることに、不安を募らせる住民がいるのも確か。
両町村でそれぞれ開かれた住民説明会では、「核のごみは町民を危険にさらし、風評被害をもたらす」「子どもたちに核のごみを残してはならない」といった声も相次いだ。
片岡町長の解職請求(リコール)運動も取り沙汰される寿都町。
町長による調査受け入れ表明を午後に控えた8日未明には町長宅への不審火事件も発生し、町には一時緊張が走った。
「北海道の恥」。神恵内村では、役場に誹謗(ひぼう)中傷の手紙も寄せられた。
2町村の応募表明で、動き始めた最終処分地の選定作業。
政府は、文献調査のみに終わってもノウハウ蓄積などで「意義がある」と2町村の動きを歓迎する。
ただ、それぞれの地域では今回生じた亀裂を埋めるという課題も負うことになる。(時事通信)
都市部の人間が電気を恩恵を享受するために原発の負担を地方に押し付ける。
現実的に東京という消費地をかかえる関東地方には茨城県の東海原発が僅か一基あるだけだ。
何とも理不尽な話だ。