自分は若い人達が作る新語には寛容だ。
そもそも言葉は生き物だ。
時代を映す鏡でもある。
それに自分達が若かった頃にもそれなりの新語があった。
いつの時代も若い世代が新語を作りあげているのだ。
さて二年前に「ギャル流行語大賞」で5位に入った「あざまる水産」という言葉をご存じだろうか?
最近ではお笑い第七世代のEXIT(イグジット)が漫才の中で使っている。
「水産」という言葉から漁業関係を連想された方は街の風景の観察不足だ。
最近は営業自粛ぎみだが居酒屋チェーンを思いだした方は観察力があるか呑兵衛のどちらかだ。
この「水産」の語源は関東、愛知、近畿圏などで店舗網を拡大している居酒屋チェーンの「磯丸水産」に由来している。
さて問題はその前にある「あざまる」だ。
この言葉の意味を先に答えてしまうと意外かもしれないが感謝の言葉なのだ。
それではその変化の流れをシニアの方にもわかるように説明しよう。
体育会系男子に多いのが「ありがとうございます。」を「あざっす。」というのは理解できるだろう。
次に「っ」が省略されて「あざす。」に変わる。
そして「す」が省略されて「あざ。」となって完成だ。
お気づきだろうか?
最後の句読点の「。」を「まる」と読んで「あざまる」という最終形となったというわけだ。
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句読点の「。」を「まる」と読ませるあたりお見事を言いたい。
そして最後に「まる」の響きから前述の「磯丸水産」の「水産」が結びついたというわけだ。
さてこの「あざまる水産」という言葉はどのように使えば良うのか?
そんなに難しい話ではない。
単純に「有り難う」の変わりに使うだけだ。
例えば「誕生日プレゼントあざまる水産」とか「今日は映画につきあってくれてあざまる水産」といった具合だ。
このように前半に本来の意味があり後半部分を語呂で他の言葉とつなげる造語は結構ある。
「了解道中膝栗毛(りょうかいどうちゅうひざくりげ)」という言葉がそうだ。
後半の語呂合わせになっているのは十返舎一九の「東海道中膝栗毛」。
ある意味、非常にアカディミックな造語である。
そうそう自分達シニア世代にも「てなもんや三度笠」で藤田まこと決め台詞だった「あたり前田のクラッカー」があった。
こちらはかなりスポンサーの意向を組んだ台詞だ。
また自分は「飛んでも八分歩いて十分」という言葉を今でも使う。
場がなごむウィットに飛んだ素晴らしい言葉だと思う。
言葉は時代を映す鏡。
若い世代が使う言葉だからこそその背景や語源を調べるのも楽しいものだ。
本日はあざまる水産。