初詣で神社などに行くと財布の紐が緩んでしまう事がある。
心のどこかに正月だから「縁起」が良いものを購入しようという気持ちが働く。
その縁起が良いものも冷静に考えれば原価は非常に安そうだ。
ところが自分に限らず皆さんここぞとばかりに購入していく。
本当に日本人はこの「縁起」という言葉に弱い。
自分などはせいぜい正月だけの話だが一年中この縁起に振り回されている人達がいる。
俗にいう「縁起を担ぐ人達」だ。
そう実はこの「縁起を担ぐ人達」をターゲットにマーケティングが行われている。
それも本当に自然な形でだ。
たまに新聞のチラシの中に「縁起の良い財布」という類の広告を目にする事はないだろうか?
他のチラシにないような明らかに厚手の紙にフルカラー印刷をしている。
それも金色を多用しており豪華な仕上がりだ。
見た目的にも相当のお金をかけている事が理解できる。
肝心の財布の方はお札を折り曲げない長財布で風水的にも縁起の良いとされている黄色を基調としたデザインだ。
価格は1万円と少々高額だ。
こんな財布を1万円で誰が買うのかと多くの人は疑問に思うだろう。
ところがそのような疑問を持つ方は凡人のようだ。
商売に長けた方は「なぜこのような広告方法でこの商品を売るのか」と考える。
この商売の仕組みはこうだ。
この手の商品の広告をばら撒くと僅かだがレスポンス(反応)があるらしい。
そのパーセンテージは不明だがレスポンスは必ずある。
仮に10万枚チラシをばら撒いても何人が確実にこの商品を購入する。
ただこれだけ高コストのチラシを新聞ばら撒くと広告宣伝費は高額になる。
数十万円の売り上げでは元が取れない。
ところが実は元が取れるのだ。
実をいうとこの「縁起の良い財布」を売っている業者は今回の財布販売で利益を出そうとは考えてはいない。
実はこの業者が高額な広告宣伝費をかけてまで欲しかったのは売上ではなく「縁起を担ぐ商品に購入する顧客リスト」だったのだ。
縁起を担ぐ人は縁起を担ぐ商品に目がない。
この業者は次回以降に利益率の高い他の「縁起を担ぐ商品」を揃える。
今度は新聞広告など使わず低コストのダイレクトメールでこの顧客リストに広告を送るというわけだ。
これは成約率のかなり高い商売になる。
まさに「損して得をとれ」だ。
商売において「顧客リスト」は宝物とされる。
江戸時代の商人は火事が起きると顧客リストである「大福帳」を水の中に入れて守ったと言われている。
家が燃えてなくなっても顧客リストがあれば商売ができるからだ。
商人にとっては顧客リストこそ縁起ものなのかもしれない。