子供の頃は12月29日ぐらいから母親が「おせち料理」の準備をしていたものだ。
ごぼう、レンコンを煮込む香りに年の瀬を感じた。
我が家では餅つきまではしなかったが家電の「餅つき機」が一年の一度の晴れ舞台で活躍していた。
短い冬休みを楽しみたかった年頃だったが面倒ながらも餅を丸くする作業を手伝っていた記憶がある。
今から思うと昔は正月前の数日間は正月の準備で本当に忙しかった。
ところが昨今はこの年末の風物詩ともいえる「おせち料理」作りをする家庭がめっきり減っている。
もちろん日本国民が「おせち」を食べなくなったわけではない。
百貨店やスーパーなどで既製品を購入したほうが楽だし安上がりという事らしい。
自宅でおせちを一から作ることは現代の生活においては向かないという事なのだろう。
その理由は簡単だ。
「核家族化」と「少子化」によるものだ。
もともと「おせち料理」は大量生産を想定した料理だ。
多品種の具材を使用するため最低の量を準備してもそこそこの量が出来上がってしまうのだ。
しかし最近のお正月は三日目の箱根駅伝を見終えると一気に正月気分も覚めて、ファミレスで洋食でも食べようという話になってしまう。
「おせち料理」は三が日も嗜好が持たなくなっている。
という事で昨今では「おせち料理」を大量に作って廃棄するぐらいなら既製品の「おせち料理」を買う方が経済的になってしまった。
悲しい事だがこれが現実だろう。
「おせち」の市場規模はおよそ600億円と言われ毎年右肩上がりが続いている。
その主戦場はもはやネット通販だ。
ちなみに正月が近づいてから受注しても生産が追いつかないため夏場から作って冷凍庫にストックしてあるらしい。
市場規模が大きいためい各社が「おせち」に寄せる期待は想像以上に大きい。
しかしネット通販で「おせち」を購入すれば家庭の主婦は楽かもしれない。
でも少々楽をし過ぎていないだろうか?
流通の仕組みが確立されればされるほど女性が楽になっているようである。
日本のマーケティングは完全に女性がターゲットだ。
テレビを見ていても家事が楽になるような商品のテレビCMばかりだ。
間違っても「この年末に作りたいおせち料理」なんていう料理番組の企画はない。
スポンサーが付かないからだ。
それよりもテレビ局側はテレビ通販での「おせち料理」販売にやっきになっているようだ。