最近、脱獄囚が逃走して話題になった島がある。
広島県尾道市の向島だ。
この島は尾道市の市街地から南側におよそ300m隔てた尾道水道のまさに向かい側にある島だ。
人口はおよそ16、000人。
尾道市の人口がおよそ14万人だから10%の人口がこの島にいることになる。
商業地である尾道市街地とは対照的にこの島の北側には工業地帯であり造船所の施設も並ぶ。
尾道市といえば大林宣彦監督の「転校生」、「時をかける少女」、「さびしんぼう」の「尾道三部作」が思い出される。
その映画の中に描かれるのは「坂の街」のイメージだ。
市街地の北側に広がる山の関係で工業地帯が対岸であるこの向島に集積されたのではないだろうか?
さてこの向島に渡る手段はフェリーだ。
狭い水道なので僅か5分でついてしまう。
尾道市民の足になっているのでピーク時間帯には5分間隔と都心の鉄道並みのダイヤで運行されている。
この向島は1968年の尾道大橋開通で本州側と陸路で繋がり、1999年には新尾道大橋の完成により四国との陸路「しまなみ海道」で繋がることになる。
こうなると島というハンデはほぼなくなった。
後は陸路で訪れる観光客を誘致したいところだ。
この「しまなみ海道」という道は採算性については不明だが、島を連続で結んでいるという事に関しては非常に重要が道路だと思う。
向島から始まり因島(旧の因島市で2006年に瀬戸田町とともに尾道市に編入される)、生口島、上三島、伯方島(「伯方の塩」で有名な塩業の島。
なお製造元の伯方塩業は現在、本社を愛媛県松山市に移している)、大島、馬島(小さな島のため島民専用のインターチェンジがある。
島民および緊急車両、郵便車などの専用カードを持つもの以外出入りは不可能。
ただし徒歩および自転車では専用エレベータで出入りが可能)、そして四国側の今治と繋がっている。
今治といえば造船とタオルで再生を図っているかつての瀬戸内海でも屈指の工業都市だ。
「しまなみ海道」での本州との接続はまさに「渡りに船」だ。
かつて瀬戸内海で一斉を風靡した村上水軍の芸予諸島に橋が架けられ経済的な再生を目指している。
今、話題になっている加計学園の岡山理科大学獣医学部もこの今治だ。
こと真相はさておき東京の一極集中を避けるためにも地方でもけん引できるところから動きだしてほしいと思う。
尾道の向島からは新たな希望への橋がつながっているような気がする。