男性はあまり鏡の前に長居はしない。
鏡の前が長いのは女性の専売特許だった。
ところが最近の自分ときたらやたらと鏡の前に長居をするようになった。
同じような男性は増えていると思う。
自分が鏡の前で長居をするのにはわけがある。
とりあえず頭に視線が行く。
若い頃に比べるとかなり減った。
というか地肌がかなり露出してしまっている。
頭をずっと眺めていても髪の毛が急に増えるわけもない。
ただ憂鬱が蓄積する時間だ。
そして興味はそのまま髪の毛の白髪に移行する。
本当に染めても染めてもキリがないのが白髪だ。
髪の毛が潤沢に残っている両サイドの耳の上の根元を探っていくと恐ろしいほど真っ白だ。
この状況を見ると坊主にするのも考えものだと思う。
短い髪の毛を染める事ほど大変な事はないからだ。
坊主にする時それは染める事を辞める時なのかもしれない。
さて白髪もキリがないのでとりあえず切り上げてしまう。
視線をさらに下に降ろしていくと今度は髭や鼻毛に混じる白髪が気になる。
改めて見ると知らない間に白髪が顔全体に感染している。
髭は毎日小まめに剃っていればさして目立つこともない。
また鼻毛は目立つものについては気がついたら処理しているのであまり深刻な問題ではない。
そう考えると男性の鏡の前で長居をして確認をしているのはほぼ「毛」の類という事になる。
鏡の前のチェックもひと通り終わり出かけようとしたら、ちらっと何かが視線に入った。
更なる「毛」の伏兵が潜んでいた。
それは「眉毛の白髪」である。
老眼で気が付かなかったが白髪が眉毛の中に数本生えている。
目の真上の眉毛の白髪に気がつかないとはこれこそ「灯台もと暗し」だ。
以前、総理大臣で立派な白髪の眉毛を伸ばしている方がいたが自分は眉毛の白髪は好きになれない。
老けて見られる以前にだらしないと思うからだ。
さてそこでこの眉毛の白髪隠しをしなければならない。
ただ人間の体に生えている毛にはそれなりの目的があるらしい。
やみくもに抜くのはよくない事を知っている。
かといって眉毛の白髪を染めるのも目のそばだけに抵抗がある。
だから自分は鼻毛用の小さなはさみで眉毛の白髪を根元から処理している。
一週間に一度で何とかなる。
眉毛は雨の滴りが直接目に入らないために生えているという。
老後は生えてくる無駄毛との抵抗を考えずに共存を考えたほうが良いだろう。