地方にお住まいの方で東京に出てきて地下鉄の乗り方に困った方は必ずいるはずだ。
都内に勤めていた時、比較的鉄道に詳しい自分でさえも考え込む時があった。
何故、東京の地下鉄はそれほど複雑なのか?
シリーズ化してこの問題に触れてみる事にする。
まず今回は基本的な知識から始めてみようと思う。
まず東京の地下鉄には二つの経営母体が存在する。
ひとつは「東京メトロ」だ。
正式名称は「東京地下鉄」で「旧帝都高速度交通営団」である。
株主は財務大臣が52.42%、東京都が46.58%だ。
財務大臣が株主を持っているのは株主である旧国鉄から出資金を継承した経緯からだ。
まずはこの株主を覚えておいてほしい。
もうひとつの経営母体は「東京都交通局」、いわゆる都営地下鉄だ。
つまるところ東京都は双方に出資していることになる。
1957年の交通審議会において、東京の地下鉄建設は営団(帝都高速度交通営団)だけではなく複数の事業主体ですすめるべきとなった。
競争原理を働かせようとしたかったのかは不明だが、結局、利用者側には非常に複雑な構造になった。
経営母体が違うのだからこの二つの会社の路線にまたがって乗車する場合には多少の割引もあるが割高になるのだ。
東京メトロの路線は銀座線、丸ノ内線、日比谷線、東西線、千代田線、半蔵門線、有楽町線、南北線、副都心線の9本だ。
都営地下鉄の路線は浅草線、三田線、新宿線、大江戸線の4本になる。
この13本の路線が東京の地下を縦横無尽に走るのだから複雑じゃないわけがない。
そしてもうひとつこの複雑さに輪をかけているのが民営鉄道やJR路線との直通運転だ。
東京市は民営鉄道の山手線内へ路線延長を一切許さなかった。
確かに東京の地図を見ても山手線から放射状に民鉄が伸びているので非常にすっきりしていると思う。
同じ環状鉄道を持つ大阪市と比べても一目瞭然だ。
大阪市は難波駅や上本町駅、天満橋駅まで地下ではなく地上で民鉄が大阪環状線の内側に入り混んでいる。
東京市は民営鉄道に地下鉄との直通運転を条件に山手線の内側に入れなかったらしい。
実はこれは地下鉄側にもメリットがあった。
地下鉄の車庫を都心部に作るスペースがないからだ。
民営鉄道と直通運転することにより郊外の車庫を確保できるというわけだ。
当時から民営鉄道と地下鉄の相互の利益を考えてこの計画を立てている。
ある意味世界に誇れる都市計画だと思う。