皆さんにとって「各駅停車」とはどのような存在だろうか?
例えば東京や大阪近郊の大手私鉄だと「目的地まで時間がかかり過ぎるので途中駅で急行や特急に乗り換えるもの」と思われる方も多い。
大都市近郊の私鉄は地域の客の利便性を考慮して細々と駅を配置している。
だから多くの乗客は各駅停車の電車に延々と乗ることはせず無料の急行や特急に乗り換えるのが一般的だ。
ところが地方に行くとその地域のJRに「無料の急行や特急」は存在せず、ある程度の駅間(平均駅間およそ3.5km)を数駅かけて各駅停車で移動するのが一般的だ。
そう各駅停車は庶民の生活の足なのだ。
ところでこの「各駅停車」の長距離を走るものが鉄ちゃんの間で話題になる事がある。
関東にお住まいの方だと最近のJRの行先表示が変わった事を実感されていないだろうか?
昔は東海道線であれば「東京駅」、中央線でも「東京駅」、宇都宮線、高崎線、常磐線の終着駅は「上野駅」というのが定番だった。
ところが「湘南新宿ライン」という新宿迂回ルートができて、その後「上野東京ライン」なるバイパスも出来た事で東京圏の始発駅と終着駅は大幅に変わってしまった。
要はJR側が車庫を郊外に移転してしまったのだ。
だから「熱海駅発宇都宮駅行き」とか「国府津駅発高崎駅行き」などが都心部の駅に入ってくるから始末が悪い。
ところが関東圏の電車の直通運転の運転距離は長そうに見えても決して一位ではない。
現状一番長い距離を運転されている「各駅停車」は山陽本線を走っている。
広島県三原市のひとつ手前の「糸崎駅」を17:46に出発した電車は23:50分に山口県の下関駅に着く。
移動距離はおよそ297kmで6時間の長旅だ。
ちなみに下関駅発糸崎駅行きは存在しない片道ルートだ。
実をいうとこの電車は「369M列車」と呼ばれており2017年3月までは岡山駅始発だったのだ。
当時はおよそ385kmを7時間30分かけて旅していた事になる。
「鉄ちゃん」と呼ばれる方々はこのようなダイヤ改正に敏感に反応する。
正直一般の人にとってはどうでも良いことだ。
ところで前述の「糸崎駅」の存在が気にならないだろうか?
なぜ三原という大きな駅があるのに「糸崎駅」なのか?
これは簡単でもともとこの駅が三原駅だったからだ。
明治25年山陽鉄道(のちの山陽本線)が尾道から延伸してきて現在の糸崎駅を「三原駅」として終点にした。
そして機関区も置かれた。
その後駅は三原市の中心部の西側に移動したため、駅名が「糸崎駅」になったというわけだ。
今でも尾道方面から下る電車で「糸崎駅」止まりは多い。
そう「糸崎駅」は幻の「三原駅」だったのだ。