根室本線は函館本線の滝川駅から道東の根室に至る延長443.8kmにも及ぶ大いなる路線だ。
ただこの路線を全線を通して走る車両はない。
「スーパーとかち」や「スーパーおおぞら」などの特急電車は概ね札幌から石勝線経由で釧路駅を目指す。
そう根室本線の終点である根室駅に向かう車両は釧路駅始発しかないのだ。
それも根室駅まで向かう車両は快速2本を含む一日僅か6本。
最果ての地を予感させるローカル線だ。
この釧路駅-根室駅間の営業指数(100円の営業収入を得るために必要な営業費用を表わす指数)は2016年度で¥542だ。
東京の山手線が\57ぐらいだからその厳しさが実感できる。
昨今のJR北海道の営業不振もあり、この釧路駅-根室駅間は「安全な鉄道サービス」を維持するための費用が確保できない線区とされている。
早い話がJR北海道は廃止に向かいたい路線なのだ。
そうなると鉄道好きな自分は俄然と応援したくなる。
釧路駅から乗車した根室本線はあまりにも単調な原野を走る。
ところが厚岸駅を過ぎると眠気を覚ます風景が広がるのだ。
湖面の上を走っていると表現したくなる。
両側の窓に広がる湿地帯の景色は日本とは思えない絶景だ。
ここは平成5年にラムサール条約の登録地にもなった別寒辺牛(べかんべうし)湿原だ。
平行する国道44号線があるがあえて根室本線で旅する事をお奨めしたい。
いつも思うが道東の風景は日本とは思えない。
これはまるでロシアの風景だ。
鉄道紀行で有名な宮脇俊三氏も著書でそう表現しているが、本当にそう思える風景が広がるのが根室本線の旅なのだ。
本州では高原でしか見られない海岸線にある白樺を見ながら丘陵地帯を車両は進む。
昆布盛駅を過ぎて根室半島に入ると根室本線は終点根室駅の手前で大きく左にカーブする。
そこにあるのが日本最東端の無人駅「東根室駅」だ。
多くの方が最東端を根室駅と思われていたのではないだろうか?
「東経145度35分50秒、北緯43度19分24秒」まぎれもなくこの駅が日本の最東端だ。
車両はそのまま根室の街に流れ込む。
街にはロシア語の表記された看板もある。
国境を感じさせる街だ。
ピーク時45,000人いた人口も今や26,000人で衰退の一途を辿っている。
お客様がいないから鉄道の本数が減る。
鉄道の本数が減るから人口が減る。
人口が減るから廃線にする。
国境の街に負のスパイラルが押し寄せている。
北海道や離島に関しては国防上からも国がある程度交通インフラをバックアップする必要があると思う。
かけがえのない国土は国民全体で守る事が重要だ。