2015年に開通した「上野東京ライン」の名前は聞いた事があると思う。
ただ実際にはその路線名は「愛称」であり、現実的には東北本線の上野駅-東京駅の事を表わしている。
以前にも触れた事があるが、東北本線(宇都宮線)の起点は東京駅だ。
その証拠に時刻表には上野駅の左側を見てみると「東京駅からの営業キロ」は「3.6キロ」となっている。
東京駅にすべての路線を集中させる事は限界があるので、上野駅を便宜上、始発駅にさせているだけなのだ。
という事で地方から上野駅に到着した乗客は山手線や京浜東北線に乗り換える必要があった。
この不便さを解決したのが「上野東京ライン」というわけだ。
ただこの取組には乗客の利便性もさることながらJR東日本の戦略が垣間見れる。
この「上野東京ライン」からさかのぼること14年前の2001年に「湘南-新宿ライン」の運行を始めている。
これは湘南地域と新宿駅を結ぶという意味ではなく、新宿を媒体にして東北本線、高崎線から入ってくる路線を南側の横須賀線や東海道線に流そうというものだ。
ここで重要となるのが山手貨物線(田端-大崎間)の存在だ。この線路があったから新設の必要がなかったわけだ。
今、JR東日本は通勤電車を中心に都心部の始発駅、終着駅を無くして、郊外の駅にシフトしている。
だから都心部の駅では「籠原行」や「古河行」「国府津行」などいったいどこに向かっているのかわからない状態になっている。
また「上野東京ライン」ルートと「湘南-新宿ライン」ルートがあるのでこれまたわかり難い。
地方の人にとっては東京の鉄道がまた一段とわかり難くなった図式だ。
ところでこの「上野東京ライン」の開業に伴いひとつの面白いダイヤ改正があった。
それは常磐線の特急のそのほとんどが品川駅始発になった事だ。
常磐線の特急電車の利用客は日立製作所に関係するビジネスマンが多い。
日立の本社がある大手町の最寄駅は東京駅という事でそのあたりを考慮したのではないかと思われる。
品川駅は今後、リニアの始発駅にもなる予定で開発が進んでいる。
今後、東京の交通は品川を中心に動いていくと思う。
途中駅となってしまった上野駅の衰退は避けきれない。
一見勝ち組に見える東京都内の中でさえ栄枯盛衰がはっきりとしてきた。
更には新幹線が来たと喜んでいる地方都市も実は衰退が始まっているのかもしれない。